第794話 ■ロッテリアの誘惑

 会社の帰り、最寄駅から自宅まではバスを利用している。210円。歩けば約20分のこの距離、その日は歩いて帰ることにした。たまには運動不足の解消にと、ただそれだけの理由。しかし、先日駅前で見つけた、「ロッテリアシェーキ半額100円」の看板もちょっと背中を押している。

 今どき100円というのは、缶ジュースよりも安い。暑い中を歩くのだから、まあ冷たい物でも飲みながら、と。しかもバスに乗るよりは安上がり。先日はカウンターに多くの人が並んでいたので通り過ぎたが、今日は少ない。すぐに自分のオーダーの番がまわって来た。手には110円握りしめ、シェーキ105円(税込み)で抑えるつもりだったが、目の前に置いてあるメニューを見てしまうと衝動を抑えることが出来なくなった。

 これがマクドナルドならこんなことはない。ちゃんと105円で店を出る自信がある。何故なら、そこにあるメニューはいつも見慣れたものでしかないからだ。ところがロッテリアは違う。そのロッテリアは駅のバス乗り場から見えるものの、立ち寄ることはまずない。よって、目新しいメニューに興味が湧いてしまう。「ふりたこ」。ロッテリアでたこ焼き?、これは買ってみるしかない。それにフライドポテトにスパイスを掛けるタイプの「フリフリポテト」系に最近凝っている(ファーストキッチンのカレーうどん味が好き)。ロッテリアでは、バターしょうゆ味というのがある。これも買わねば。バナナとパイナップルのパイ、「バナナップルパイ」。ついでにチキンも食べたくなった。しめて、1,500円もの買い物になってしまった。

 大きな袋からがさごそとシェーキを取り出し、ストローを口に歩く。5分でカップは空になった。続いてチキン。スパイスの効いたピリ辛系の小ぶりなチキンが2本。これまた歩きながら5分で平らげる。運動不足解消というのはカロリーの消費が目的でもある。しかし、それどころか、この10分間でこのまま数時間は歩きつづけないと消費できないほどのカロリーを歩きながら摂取してしまった。おまけに1週間分以上のバス代をつぎ込んでしまっっている。自宅までの残りの10分間は黙々と歩いた。「ふりたこ」はその日の夕食のおかずの一品として食卓に並んだ。

(秀)