第817話 ■クイズ番組の変遷(前編)

 かつては視聴者参加形式のクイズ番組が数多く放送されていた。基本線が問題への受け答えであることはいずれにも共通していたが、正解を答えたことで、次の問題の選択権が与えられたり(「クイズグランプリ」)、陣取りを行ったり(「アタック25」)、単にポイントを表示するだけなのにわざわざ乗っているゴンドラが上昇していく(「アップダウンクイズ」)などの工夫をしていた。そしてその企画やスケール、質の面などから総合的に判断して、究極のクイズスタイルが「アメリカ横断ウルトラクイズ」だったのは明らかだろう。

 それからしばらくはどういうわけか視聴者参加形式の番組が一掃され、クイズ番組は冬の時代を迎える。そして新たに現れたのが芸能人を回答者として迎え、VTRを見せて出題するという趣向のものだった。ここで、放送時間もゴールデンタイムに移行し、時間もこれまでの視聴者参加もの30分に対し、1時間ものとなる。海外取材や動物ものが中心で、今もこのスタイルは続いている。いくつか例を挙げてみよう。「なるほどザ・ワールド」、「世界まるごとハウマッチ」、「クイズ 世界はSHOW by SHOW by」、「どうぶつ奇想天外」、「世界ウルルン滞在記」 、「運命のダダダダーン」…。いっぱいあって、思い出せないものや見ていなかったものも結構ありそうだ。クイズの形式を取らなくても、単にVTRを見せるだけで番組を作ってしまうといった短絡的な悪しきスタイルもこの頃から現れたと思われる。

 ただ、このVTRクイズの場合、クイズとしての質には大いに疑問がある。知恵・知識としてほとんど役に立たず、その場限りのものでしかない。外国でのある個人(それもまったくの素人)の行動や局地的な風習や文化を出題して何が面白いのだろうか?。「なるほどザ・ワールド」の最後の問題、「恋人当てクイズ」なんかはクイズじゃないだろう。クイズの勝敗はよそに、単なる情報番組として見るのが正しいのかもしれない。クイズとしてまともだったのは、「ヒントでピント」ぐらいだったかな?。

 その一方で、視聴者参加形式のクイズは「カルトQ」や「TVチャンピョン」のように専門化し、奥が深くなっていく。かつてのテレビを見ながら一緒に回答することを楽しみとしていたものから、回答者のすごさを見てうなずくスタイルがこれらの形式を支えていた。

<後編へ続く>

(秀)