第877話 ■ボタンのないマウス

 久しぶりに秋葉原で途中下車して私が買い求めたのはマウスだった。パソコンのマウスである。本来ならマウスよりもトラックボールの方が好きなのだが、いかんせんこちらは高い。よってマウスに甘んじることにした。目標はUSB接続のマウス。もちろんホイールローラー付き。できれば光学式の方がメンテンスが楽でよい。ボール式はときどき分解してローラーを掃除しなくてはならないし、だいたいこの部分から壊れていく。

 秋葉原に行けば、キーボードやマウスが定価で1万円なんてものも、その十分の一程度の価格で見つけることができる。そもそも定価の1万円というのが妖しく思える街だ。予想通り千円以下でUSBの光学式マウスが見つかるがちょっと小振りだ。おまけにボディと色も合わない。携帯には便利かも知れないが、どうせデスクで使うものだから携帯性よりも握った感じを大切にしたい。別の店に移動する。

 次の店で目にしたのは、クリアスケルトンのマウスだった。大きさもちょうど手頃だ。ビニールに入ったものを握ってみる。しかし不思議なことにこのマウスにはクリックボタンがない。最近のマッキントッシュのマウスで同じ様にボタンのないものがある。こっちはワンボタンなので、親指と中指でマウスの両端を押さえた状態で、人差し指でマウスの前方を押さえればクリックできる。シーソーのような原理になっている。

 類稀なるデザインと、こんなマッキントッシュのマウスに関する余計な知識が災いし、そのスケルトンマウスを買ってしまった。税別980円。ところが家に持ち帰って、さて困った。このマウスでクリックするにはマウスを掴んで左右に傾けなくてはならない。その状態でダブルクリックをする様子を想像して欲しい(ここでちょっとシンキングタイム)。大幅なドラッグも結構つらい。動かすたびにホイールローラー部が青く光って綺麗だが、これでは腱鞘炎になりかねない。私がこのマウスを捨てる日も近い。安物買いの銭失い。

(秀)