第942話 ■母さんは知っている

 冷蔵庫の一番上の段の奥の方にコンビニの袋が置かれている。中身は2個らしい。そう、妻に言われて見てみると、確かにコンビニの袋が置いてある。しかし、中を確認してまで見ることはしない。自分の覚えのないこの袋を発見し、気になって中身を確認した妻。そのことをどうしても私に話したかったらしく、私の帰りを待っていたようだ。

 この袋の所有者は小学6年生の娘だ。中身はチョコレート。こっそり買って、溶けないように、しかも目立たないところにということで、冷蔵庫の最上段の奥の方にしまいこんでいたようだ。「だまっているところからすると、お父さんのじゃないよ、きっと」と妻は言う。誰の手に渡るのかはさておき、本人の小遣いから買って隠しているのだから、二人とも気づいていないことにしておこうと申し合わせた。それが二日前の出来事だ。

 明日はいよいよバレンタインデーだ。さっき冷蔵庫を開けたついでに最上段を見てみたら、その袋は姿を消していた。既にランドセルの中に移されたのだろう。黙ってはいるが、母さんは知っている。ついでに父さんまで。決して口外はしないが、コラムのネタになってしまっている。

(秀)