第955話 ■警報装置

 先週の土曜日に待望の車が納品された。週末は自分でも走らせたが、ここ数日は目下妻の買い物車となっている。3列シートで車検証上は8人乗りということになっている。あまりに嬉しいのでこの車で寝泊りしたいくらいだったが、まだ寒いのでやめた。マンションの駐車場には他にも多少高価な車が止まってはいるが、とりあえず私の車が最も新しく、一番ピカピカ光っている。

 気になるのは車へのいたずらだ。マンションの駐車場で年に1件程度の割合で、いたずらが起きている。車そのものが消えた例はないが、窓ガラスが割られて車内から物が盗まれたり、前の方のナンバープレートが盗まれたりしている。高い車が狙われるとか、新しい車が狙われるとかの共通点がない。奥に入り込んでの死角となるところは狙われやすい気もするが。

 幸運にも私の駐車場は入り口すぐ側。道路に面し、街灯の真下ときている。深夜の人通りはほとんどないが、悪事を働くには避けておきたいような場所かもしれない。しかし、今まで通りのように、単に幸運に任せているわけにも行かない。さんざん値引きをさせられて弱っていたはずの自動車ディーラーの営業マンが「防犯装置付けときましょうか?。サービスしますから」とタダでくれた。タダより高いものはなかろうと、折角の好意を無駄にするわけにもいかず、車上荒らしの件も気になっていたのでまさに渡りに船だった。

 タバコの箱をちょっと平べったくしたような感じの大きさの箱がサンバイザーに付いている。それほど本格的な防犯警報装置ではないが、センサーをセットした後、振動を与えれば警告音を発する。解除するには車のエンジンをかけるか、アクセサリーの状態で、警報機に電源が供給される状態になれば止まる。このため、乗り込む際には必ず軽い警告音が鳴ってしまう。もたついてしまうと、さらに警告音は大きく鳴る仕掛けだ。

 実際に車上荒らしが現れて、警報が鳴ってしまったところで、あいにく私は夢の中かもしれない。朝起きて、ようやく愛車がピーピー鳴いているのに気づくかもしれない。中にはクラクションに連動して、警報がクラクションで鳴る装置もあるようだが、そこまでの代物ではない。それでも警報機はセットすると、ピカピカと小さいながらも赤いライトを点滅する。実際に音が鳴ることよりもこのライトが「見張ってるぞー!」と威嚇し、「警報セット中」であることを明示している抑止力の方に私は注目している。警報機つきの車と分かれば避けるだろうと。

 家に帰り着くと、まず駐車場に目をやる。目を凝らして、赤い「見張ってるぞー!」ライトを探す。夕方にもう一度ぐらいは乗るだろうと、警報をセットしていないときなどは私がチェックし、それをセットしてから部屋へ入ることにしている。ついでに車両保険にも入った。

(秀)