第999話 ■懐かしい話について

 かれこれ4年にわたって懐かしい話なんぞを書いてきた。最初はこの懐かしい話を中心にしたコラムにしようと思っていたが、それ以外にも文字にしておきたいことが現れ、いつの間にか幕の内弁当どころか、デパートの如く、広範な対象についてコラムを書くことになった。結果、このことが毎日続けてこられた点でもプラスであった。

 あれは高校2年のときだった。担任の先生が何かの折に、「お前達が今から昔を懐かしんでちゃいかん。そんなのは年を取ってからやれば良い。若いうちは前を向いていろ!」と言った。それから約20年。その生徒の一人はせっせと今、昔話を書き記している。もちろん私のことだ。実際にこのコラムを始めるにあたって、この担任の言葉が気になった。しかし、「今書き残しておかないと、私の記憶からも永遠に消え去るものがあるかもしれない」という思いが勝って書き始めるに至った。まだまだ書き足りない懐かしい話はあるし、一旦書いた話もいずれは増補したいと思っている。

 かつて私は写真が好きで、当時いろいろとカメラや機材が欲しくてたまらなかった。しかし、当時は金がない。時を経て、自分で金を稼ぐようになって、ある程度買うことができたが、やがていずれも手放してしまうに至った。当時の最新機を手にしても、あのときに買えなかった気持ちを満足させるには至らなかった。かえって、当時欲しかったものあたりが今でも気になる。他でも同様。スカイラインで言えば、鉄仮面(昭和60年当時のRS/Xターボ)。それぞれ、モノを媒体として、今でも記憶を支えている。

 今もいずれは過去になる。過去を書き、今を書きながらもいずれそれらも過去になる。最近は新しいものほど、その寿命が短いときている。流行や文化、最近は流行り廃りの早いこと。それらもできる限り書き残してやろう。まあ、それでも得意な時期というのがあるとすれば、私にとっては20年位前だろうか。そしてそこから更に遡ること10年。まだまだ書き足りないことはまたいずれの機会に。

(秀)