第589話 ■欽ちゃんはおもしろかったか?
欽ちゃん、萩本欽一。彼は本当におもしろかったのかを検証してみたい。もう20年近く前のことになるだろうが、彼はテレビのレギュラー番組を連日抱え、その視聴率を合計すると100%にも達するほどであった。月曜日は「欽ドン」、水曜日は「欽どこ」、そして金曜日には「週刊欽曜日」と。
「欽ドン」は、「欽ちゃんのドンとやってみよう」というタイトルを縮めたもので、かつては土曜日の夜7時半からの1時間半の番組だった。その中の「母と子の会話」、「レコード大作戦(曲の一部分を会話として使用し、オチをつける)」などのコーナーは、そもそもはラジオ番組でリスナーからのはがきで構成されていたものだった。もちろん、ライバルは「8時だョ!全員集合」である。結果は全員集合を脅かしはするものの、新規加入の志村のブレイクにより破れてしまう。やや蛇足であるが、「8時だョ!全員集合」は裏番組であった「コント55号の『世界は笑う』(フジテレビ)」という番組の対抗馬として登場し、それに勝利していた。
その後、欽ドンは「欽ドン 良い子悪い子普通の子」という形で、再登場する。冒頭の欽ちゃん全盛期はこの頃である。彼の周りには色々なキャラクターが存在する。しかし、いずれも素人っぽい。欽ちゃんはそれをからかって、いじくって視聴者の笑いを取っている。自ら仕掛けて笑いを取るのは、「欽ちゃん走り」くらいであろう。このスタイルは上記のそれぞれの番組にとどまらず、今も司会を続ける仮装大賞でも同様である。彼の笑いは人を陥れるようなことはない。だから子供からお年寄りまで幅広く好まれている。しかし、熱狂的とは言えない。おばちゃん達が通りすがりの芸能人を見つけて「いつも見てるよ」と言っているのとあまり変わっていない気がする。
さて、結論であるが、彼は決しておもしろくはなかった。所詮素人や他人をいじって笑いを取っていたに過ぎない。素人相手のツッコミである。欽ちゃんの笑いの正体はそうだったのだ。オリジナリティがない。それでも当時はおもしろいと思っていたなんて、なんと未熟だったのか。けど二郎さんはおもしろいと今でも思っている。
(秀)
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