第2076話 ■プログラムは平等だけど

 平成元年に就職し、最初は全体での社員研修を受け、3ヶ月後の配属は「強化部付SE」という辞令だった。別に職種別の採用ではなく、3ヶ月間の研修、実習の傍ら、適正テストなどを経ての配属だ。正直、SEがどんな仕事をするものかなどほとんど知らなかった。そこからまた、9ヶ月間の研修となって、その間にまずはアルゴリズムや幾つかのプログラム言語を習った。

 プログラムを作るのは初めてだったが、これがとても面白く、自分の性に合っていると思った。プログラムは平等だからだ。正しいプログラムは必ず動くし、間違ったプログラムはちゃんと動かない(ミスがあっても、その部分を通らなければ、見掛け上は動いてしまうが)。同じことをすれば必ず同じ結果を出す。プログラムは誰が作ろうとそんなことは関係ない。新入社員であろうと、ベテランであろうと関係ない。

 しかし、会社社会では同じ内容であっても、誰が言ったかが重要である。新入社員が言ってもダメだが、部長が言えばOKとか。そして、プログラムはいつも同じ動きをするが、会社の中は常に同じ動きをするとは限らない。むしろそうある方が稀である。学校の勉強の延長のように正解があって、その正解を探し続けることが私の最初の仕事だった。

 入社から1年後の春、SE研修を受けた同期とともに改めての配属を迎えたが、実際にSE職としての配属を受けたのはそのうちの半分だった。自分は「じゃない」方だった。別に気落ちすることなどなく、自分が希望したコンピュータ機器の企画部署だったのでむしろ嬉しかった。ただいずれの部署への配属であっても、プログラムのように一様にいかない状況をようやく体験することになった。もちろん、プログラムの開発スキルはその部署でも有用で、正解と非正解の間の中で、少々はスキルアップしていったと思う。

(秀)