第1059話 ■カード

 財布の中には実に多くのカードが入っている。別に私がカードマニアと言うわけではない。せっかくなんで財布から取り出して眺めてみた。最近いつ使ったかを考えてみるが、それほど頻繁に使っているカードなどない。財布に収まりきれないカードが定期入れにも入っている。こっちは電車でないと行けない店のポイントカードととりあえずルールは決まっている。

 悩ましいのはやはりポイントカードだろう。せっかくくれるポイントをみすみす逃すのがもったいないという気持ちがある。これが家電量販店の買い上げ金額の10%近いポイントを金銭で戻してくれるのなら確かに魅力だ。しかも例え少額でも次の回から使用できる。一方、買い上げごとにスタンプを押してくれるタイプはいかん。例えば1年間でスタンプを20個集めると割引券をくれるCDショップ。このご時世に年間2万円もつぎ込む余裕はない。不況とか言う意味ではなく、レンタルがこれほど普及している時期という意味である。

 結局、期限内にポイントを集めきれなかった場合はそれまでのポイントは無効になり、実際の還元率は0%ということになる。そして私は気まぐれに会社の帰りにポツポツといくつかのCDショップに立ち寄ったりする。「カードがあるからあの店で買おう」という気はまずない。よって、この手のCDショップのポイントカードは持ち歩くのは止めた。「カード忘れました」と言い、レシートにスタンプを押してもらって、次回いっしょにスタンプを押してもらおう、なんて気も起こらない。「ポイントカードお持ちですか?」と聞かれれば、「持ってないし、いりません」と応える。

 この手のポイントカードで「BOOK OFF」のものはよく利用している。還元率は5%でしかないが、これは確実に5%還元されている。それに定価でばかり本を買っていたのはお金が続かないので、古本屋にも足繁く通っている。一方、悩ましいのは還元率1%というやつだ。10万円買って、たったの千円。1万円ならたったの百円。これでは缶ジュースも飲めない。その、いつと分からない出番のためにかさばったカードを持ち歩くことが馬鹿らしく思えてきた。

 残るはキャッシュカードにクレジットカード、それにレンタルショップの会員証。それぞれ2枚ずつ入っている。このようなカードはもちろんのこと、単なるポイントカードにもそれを発行してもらう際には多少なりの個人情報を渡していたりする。還元率が1%程度のために個人情報を売り渡していると思ったら、ゾッとした。かさばって持って歩くのが馬鹿らしく思えるようなカードのために自分の個人情報を提供するのは割に合わないと気がついた。

(秀)