第1072話 ■故郷の古本屋にて(1)

 昨日から休暇を取って故郷に一人里帰りしている。中途半端な時期で、しかも平日であるため、遊び相手もいない。よって、古本屋めぐりをして時間を潰す。家人が前回里帰りしたときに見つけたという古本屋に花登筐の本を探しに行ってみたが、あいにく見つからなかった。

 ところで、自分が将来何になりたかったかを記憶でたどると「エジソンみたいな人になりたい」という一文を小学校の文集に寄稿したことを覚えている。確かそう思って書き記したのは小学3年生のときだったと記憶している。この話は今でも何かと「大きくなったら何になりたいか?」という、息子との話のときのネタになる。けど、結局いつの間にか理系ではなく文系になり、今ではしがないサラリーマンになり、趣味でモノ書きの真似事をするに至っている。

 さて、その私のかつての志を書き残した小学校の文集であるが、それを冒頭の古本屋で発見した。たまたまこの文集が小学校の創立百周年の記念誌であったため、こうして古本屋に並んでいた。当時在校生だった私たちに配られたものとは体裁が異なり、内容も増補されていた。ページをめくると確かにあった。3年3組のところに「エジソンみたいな人になりたい」という一文が。早速買い求めた。

 当時の全校生徒が将来の夢を書いていた。男の子の多くは野球選手になると宣言している。しかしそれを実現した者は誰一人としていない。サッカー選手になりたいなどとは誰も書いていない。そんな時代だった。既にこのときから28年も経っている。学校は間もなく130周年を迎えるわけだ。私が知る限り、「学校の先生になりたい」と書き記した女の子がその通りに学校の先生になっている。

(秀)