第1092話 ■討入三昧

 今年もまた忠臣蔵の討入の日がやってきた。今年私が新たに読んだ忠臣蔵関連の本は文庫本で2冊と、ここ数年ではかなりの少量となった。また昨年、昨々年はその日に泉岳寺に足を運んだりもしたが、それに比べると今年は非常にひっそりとした一日だった。

 せめてもの償いというわけではないが、ここ数日、衛星放送から録り貯めた忠臣蔵の映画を見ることにした。時間がないので、討入のシーンのみをそれぞれ20分ほど3本。文字通り、「討入三昧」である。いずれも私が生まれる前の、50年ほど昔に撮られたものである。片岡千恵蔵や坂東妻三郎などというキャスティングである。歌舞伎役者は映画でもあの雰囲気で台詞を吐いている。周りからは浮いてしまってかえってリアリティがなくなってしまう。

 旧暦は月の中ごろ、14日となれば月はほぼ満月に近く、多少は明るかろうが、屋敷の中まであんな感じに明るいはずがない。蝋燭を廊下に掲げ、浪士達は「がんどう」という照明器具を手持ち、さもなくば相手も見えないような状態のはず。そして深夜も明け方に近い頃合であるため、屋敷内に火の気はないだろうし、明かりもなかったはずだ。

 吉良上野之介は炭焼き小屋に隠れていたところを発見されたらしい。既に槍で一突きされており、炭焼き小屋から引きずり出されたときには絶命していたと伝えられている。しかし、映画では存命のまま引きずり出されることになる。誰も吉良の顔を知らなかったため、門番に本人確認をさせるが、これが本当に吉良であったかどうかを科学的に証明した根拠は残っていない。別人説も出ている。

 炭焼き小屋ならぬ、農家の地下からサダム・フセインは引きずり出された。科学的に本人確認はされたようである。

(秀)