第1136話 ■鈴木英人

 自分なりに「昭和史」をまとめてみようという構想(第1132話参照)を立てて、大まかにそれぞれ自分が暮らしてきた時代を5年刻みぐらいで大雑把に特徴付けてみようと思った。その中で昭和50年代後半となると、話題もそれまでのテレビ番組やおもちゃなどから、音楽や芸能へとその中心が移っていくのに改めて気が付く。

 中学生から高校生へという、非常に多感な時期をここで私は過ごしたわけだが、今思い出しても、非常に「ポアポア」とした時代だったような気がする。田舎にいたため、都会の様子を現実に目の当たりにしたことはなかったが、テレビや雑誌の情報で全てを知り尽くしたような錯覚すらしていた。今思えば非常に恥ずかしい限りだ。この頃は世の中全体が非常に派手派手しく、それがそのままさらに勢いづいて、バブル経済期へと突き進んでいったような気がする。

 この昭和50年代後半、すなわち80年代前半を印象付けるアイテムに関する話だが、私の場合、これは鈴木英人氏のイラストである。私の記憶が確かならば、彼の作品が最初に注目されたのは山下達郎の「FOR YOU」というアルバムのジャケットのイラストで、それは、82年(昭和57年だったと思う)のことだった。その後、雑誌「FMステーション」の表紙を飾ってブレイクする。私も何種類かあるFM雑誌の中から、表紙だけでこの雑誌を買っていた。

 ところで、コカ・コーラのノベルティ・グッズは地域によって違うのだろうか?。83年の夏にコカ・コーラのノベルティ・グッズとして鈴木英人氏のイラストのコップが現れた。1リットルサイズを2本買えばもらえるものだったように記憶している。全体が白いプラスチック製で胴の部分が透明のプラスチック、その下に紙のイラストが巻いてあるものだった。デザインは全部で10種類ほどあったと思う。

 簡単にもらえるので、我が家でもこのコップがたまりにたまり、歯磨きコップなんかにしてまで使った。作りが余りよくないので、たわしで簡単に傷が入ってしまい、そうなると飲み物の汚れが取れなくなってしまって、次々にお払い箱になっていってしまった。「こんなことなら使わずに取っておくんだったなあ~」と今頃になって思ってももう遅い。そのはかなさが、思い出に有り難味が増す、また一つの重要な要素であったりする。

(秀)