第1214話 ■窓の明かり

 マンションの3階の道側角部屋。ここが我が家である。道路に面しているので、帰り道、部屋の明かりが点いているのか分かる。子供部屋2つの明かりが点いているのが分かるとホッとする。子供部屋の電気が点いているということは彼らは居間にはいないと言うことだ。部屋にこもってテレビを見ているかも知れない。いや、しかし今日は明かりが点いていることがうれしかった。

 昨日は長女と長男にそれぞれシャープペンを土産に買って帰った。グリップ部分のゴムが柔らかく、長時間持っていても疲れないように細工されているやつである。触ってみると自在に形を変え、馴染んでくる。長男は「クラスで持っている人がいて欲しかったんだ」と言う。長女は「気持ち良い」と言う。確かにこのグニュグニュ感は癖になりそうだ。二人の喜びぶりに自分も嬉しくなって、彼らの喜びようを妻にまで話した。

 ドアを開けると「お帰りなさい」という声とともに、二人が廊下に出てきた。それぞれの部屋を覗くと、机の上にノートが広げられ、昨日買ってやってシャープペンが転がっている。二人とも勉強は嫌いな方で、長女は受験生ながら、まだまだ本気になれずにいる。成績は推して知るべし。しかし今日はきちんと二人とも自室で勉強をしていた。シャープペンの効果かどうか分からないが嬉しい。

 「おっ、勉強やってたんだ」と言うと、「うん、もうすぐ終わる」と言う。ちょっと拍子抜けした。明日はもうちょっと早く帰ってこようと思う。

(秀)