第1215話 ■レジャーシート

 私が小学3年生のときだから、昭和50年のこと。30年前の話だ。春の遠足のときに一人のクラスメイトの女子が透明ビニールの手提げバックに何やらカラフルなビニールの物体を手に提げていた。毎年春の遠足は徒歩で出掛ける。彼女はリュックを背負い、水筒を提げ、手にはそのビニールバックを提げて、終始にこやかに歩いていた。そうだ、彼女はキャンディーズのミキに似ていた。

 ガリ版で作られた遠足のしおりの持ってくるものの欄には新聞紙と書かれていた。敷物としての新聞紙であり、これを大量に持って行くことは子供にとっては自慢でもあった。友達数人と必要以上に広々と新聞を広げた。まるで陣取りのように。そして昼休みが終わるとその新聞紙は捨てて帰った。

 あの時、彼女が手にしているビニールはレジャーシートであったが、その時にそんな気の利いた名前なんか知らなかった。「ビニールの敷物」。数年後の遠足のしおりの持ってくるものの欄にはそのように書かれる様なった気がする。新聞紙なんか持ってくるものはめっきり減り、新聞紙を持っていくのが恥ずかしくもなった。かつては弁当の包みも新聞紙だったのに。

(秀)