第1213話 ■兄弟ゲンカ

 私には9歳離れた兄がいて、昔よくケンカをした。年の差から言って、いつも決まって泣かされる結果となる。誰の善悪かはさておき、「勝てないんだからやめなさい」というのが母のお決まりの台詞。この言葉をしゃくりあげながら何度聞いたことか。しかし、兄弟ゲンカってそんなもんじゃないよね。勝てるかどうかは別として下のものは向かって行くんだ。そして親が「いい加減にしろ!」と怒って終わる。テレビのチャンネル権やら食べ物のことと、今になって思えば、どうでも良いようなことがそのときには非常に大切なことだった。

 私の長女と長男が昔よくケンカをした。そのときは決まって二人にこう言ってやった。「お父さん、お母さんはいずれ先に死ぬ。そうするとお前達はたった二人っきりの肉親になる。だから仲良くしなさい」と。子供には実感がなかろうと、いずれ思い出してくれるだろうとその都度繰り返し話した。

 ところがそれから数年後、彼らに妹が生まれる。あの台詞の「たった二人っきりの肉親」というフレーズの価値が崩壊した。ただ、彼ら二人のケンカは急速に減少し、代わりに今では姉妹、兄妹の構図でのケンカが連日繰り返されている。いつも妹が泣かされる。親としてどっちに味方すべきか困る。とりあえず、年上の方が割を食うことになる。多分ほかの家でもそうだろう。

(秀)