第1216話 ■ブーメラン

 私がブーメランの現物を初めて見たのは、駄菓子屋の店先に並んでいるそれであった。確か幼稚園の頃だと思う。柔らかいプラスチック製で、色はカラフルに青や緑に黄色が揃っていて、パッケージはビニールにブーメランと厚紙が入っていたと思う。

 それは投げて遊ぶもの、また、投げたら自分の所に戻ってくるものと認識したのは何故だったろうか?。怪獣王子の影響だったような気がする。怪獣王子とは当時の特撮実写ドラマでその怪獣王子が大きなブーメランを背中に背負っていて、いざというときにそれを投げ、見事に戻ってくるというものだった。たぶん見たのは再放送だったと思うが。

 早速買い求めた駄菓子屋のブーメランを投げてみる。怪獣王子のものに比べるとかなりちゃちであるが、気分は怪獣王子だ。ところがブーメランは数メートル先でポトンと落ちた。駆寄って拾い上げ、また元の位置から投げてみる。結果は同じ。この元の位置からというのがポイント。子供とはそんなところにこだわる。戻ってくるどころか、まともに飛びもしない。投げ方が悪いのか、ブーメラン自身が悪いのかは分からずじまい。

 これまでこのブーメランを買ったのは一度だけではない。たかだか20円程度の支出であるが、懲りずにほとぼりが冷める頃にはまた買っている。しかしその後、西条秀樹が「ブーメラン、ブーメラン」と歌っても、ブーメランがブームになることはなかった。今だったら昔に比べると格段に論理的に投げることができそうだ。そんなときに限って、周りに駄菓子屋がない。

(秀)