第1293話 ■おくやみ

 今日は会社の帰りにお通夜に行ってきた。普通なら社員の御尊父や御母堂ということだが、今日は一緒に仕事をしてきた人、本人である。会社こそ違うけれど、グループ会社の先輩としておつきあいいただき、お世話になった。ここ数年はお互いの異動によりつきあいも途絶えていたが、その間に入退院を繰り返されていたようで、そのような状況は全く知らなかった。そして訃報が突然メールで届いた。遺影を前に「本当に亡くなったんだ」というのが正直な思いだ。そして日常では遠かった死をちょっと身近に感じる。

 私は人は死んだら全てそれでおしまいで、あの世の存在なんか信じていないし、霊の存在も信じていない。だから、「ご冥福を」なんて口では言ったりしても、本心ではあの世での幸せなどそもそもが存在しないと思っている。それでも通夜や葬式に駆けつけるのは故人への感謝の清算だという位置付けだ。

 このような死生観のため、自分の場合はできるだけ子供たちには迷惑を掛けたくない。子供の世代ならまだしも、会ったことのない子孫に会ったことのない先祖として迷惑を掛けるのが忍びない。「墓や仏壇はいらない。散骨してくれて構わない」と明言している。さらに通夜や葬式もなくて良いとさえ思っている。ただ、参列者が私に別れを告げる儀式を望むのならやっても良いかなと思うが、そのとき私の存在は無くなっている訳だから、私のためなら意味が無い。

 もし通夜や葬式をやるんだったら、その日の土産に参列者には私が書いたコラムの本を渡すことにしよう。けど遠路はるばる来ていただくのも恐縮だから、インターネット葬式ということで、祭壇のURLをメールで送るというのはどうだろうか?。香典は銀行振込で。

 辛気臭い別れはいかん。合掌。

(秀)