第1309話 ■ランドセル

 末娘がこの春小学校にあがるとあって、あれこれと物入りである。一番高額なのは学習机となるが、新入学の準備での花形となると、やはりランドセルだろう。どっちのおじいちゃん、おばあちゃんが買ってあげるといったことがないように、今回は私が買うことにした。

 実は以前から売り場に並ぶランドセルを見てはいたが、「直前になるともっと安くなるかも」と家人が言うので、そんなもんかと思っていたが、店員によると在庫数は少なく、注文いただいてのメーカーからの配送、なんてケースもある。特に特殊な色はあらかじめ生産数を決めてそれだけしか作らないとも言われた。年中売れるものでもないし、一般人には分からないが年ごとのモデルがあるため、あまり余計には作らないということだ。

 せっかく買いに行ったからには背負わせてみて、本人の納得の上に商品を決めて、できればそれを持ち帰りたいもんだ。あまり特徴なく、けど高いものは在庫があったりするが、値段が手頃で機能的にもいろいろとセールスポイントがあるものは展示見本だけで、取り寄せとなる。しかも場合によってはそれから生産で一ヵ月後の納品と言われる場合もあった。結局これで良し、と決まったものを私が会社帰りに探して買い求めることになった。

 私が会社帰りに○○カメラでカーマインレッドのランドセルを買い求めた。本人は大喜びで早速背負ってみる。自分にも覚えがある。私の場合は長兄が買ってくれた。毎日のように箱から出して背負って、また大事に箱にしまった。その繰り返し。家人は嬉しくて何度も背負って、あるときは学校ごっこなどやって、入学式の頃には相当傷んでしまっていたらしい。よって末娘のランドセルはこっそり押入の上の天袋に箱に入ったまま、しまわれている。

 スタンダードな赤と黒に交じって、色々な色のランドセルも並んでいる。一口に赤と言ってもピンクに近いものまで3種類くらいあり、これに明らかなピンクが女の子用にはさらに加わる。カラフルなランドセルを売りにしているスーパーで、「今年はオレンジ」と勧められたという話も聞いた。その根拠はもちろん分からない。ただCMで見ると楽しそうにオレンジのランドセルを背負った男の子を前面に押し出していた。

 確かに個性としてそのようなカラフルなランドセルも良いと思うが、それが仲間外れやいじめの材料になりやしないかという危惧もある。だから私は自分の子にはスタンダードな赤と黒のランドセルを選んで来た。振り返ってみれば自分が小学生の時、近くに住む同級生の達ちゃんのランドセルは茶色だった。艶もなくどんよりとしたそのランドセルは友達から「う○こ色」と呼ばれて、達ちゃんは家族に泣きながら「このランドセルでは学校に行かない」と訴えていた。そしてまもなくランドセルを使わなくなった。本人はこのこと覚えているかな?。

(秀)