第488話 ■鏡の素顔

 鏡に映った姿が真のあなたの姿とは限らない。「左右反対だから?」。そんなことではない。鏡の中のあなたは普段よりもいくらか美人で、可愛く、格好良く、そして立派な姿のはずである。こんな話が、とあるエッセイに書かれていた。特にその数字に根拠があるわけではないだろうが、その度合は「5%増し」と記されていた。鏡で自分の姿を見ているときは、誰もが一生懸命に良い顔を作るだろうし、見栄えの良い角度もちゃんと心得ている。よって、このことで得られる効果が5%増しだという説明である。納得。

 一生懸命に髪型を決めてもどうも思うようにならない。眉が変。前髪を切り過ぎた、などと鏡の前で悩むこともあるだろう。ところが、そんなことが気になっているのは自分だけだったりする。とりあえず、言ってみて、「ううん、変じゃないよ」と言われるのを期待してみたりするが、所詮他人ごとでしかないし、あなたが思うほど周りの人はあなたの前髪や眉までなんて気にしていない。

 写真映りが良い、とか、悪い、というのも鏡の話の応用型だと思う。要はシャッターを押される瞬間にいかに自分を鏡の前の如く、良い顔を作り、お気に入りの角度が実現できるかである。「写真映りが悪い」、と言っているのは、それが普段の自分の姿だと気付いていない人の言い訳なだけだったりするわけだ。

(秀)