第1344話 ■裁判傍聴記(2)
前話からのつづき。
この日の2つ目の裁判は強制わいせつ事件。映画「それでもボクはやってない」のように電車内の痴漢か?。否認しているのか?、という期待があったが、実際は路上での痴漢行為だった。被告人は40台半ば、バツイチ独身、無職。ベビーカーを押していた女性の背後から女性の右胸を揉んで逃げたが途中でコケて、被害者の女性に現行犯逮捕されていた。
裁判官と検察官は先ほどの裁判と同じ。弁護人は若い女性だった。これまた起訴事実をそのまま認め、争わない。注目は被告人質問。弁護人が「今後今回のように性欲が出てきたらどうするか?」と聞くと、被告人は「風俗に行って発散します」という間抜けぶり。すかさず検察からの反対尋問で「これまで風俗に行った事があるか?」と聞かれると被告人は「はい」と返事。「どうして今回はこうなったのか?」という質問には「風俗に行く金がなかった」とこれまた間抜けな返事。「被害者と示談する気はなかったか?」という質問には「金がなかった」と回答。無職であることを取り上げられ、「結局金がないからこのような犯罪を今後もやるんでしょう」と詰められていた。
これまた即日結審。求刑懲役2年に対し、求刑懲役2年執行猶予3年。起訴事実を認めているながらも2年という判決は執行猶予が付いたものの。相当に重いものだと思った。これまた傍聴人は自分だけ。
ここでしばし次の裁判まで時間があったので一旦部屋を出ると、ベンチで一人の老人と女性が座って話をしていた。「今日求刑までいくでしょうか?」、「今日はそこまではいかないでしょう」といったやり取り、弁護人と被告人の妻の会話だった。次の裁判は今日が何度目かの公判で継続案件だった。
本日3つ目の裁判。覚せい剤と道路交通法違反および窃盗である。正面奥の扉から坊主頭の一見でその筋の人と分かる強面入場。裁判官と検察官は引き続きそのままで、弁護側の証人尋問から始まった。証人は被告人の妻。ドラマなどで情状酌量を狙うケースのあれである。起訴事実は認めているが、罪が多いことと前科があることで慎重に審議されている。この日は今回の覚せい剤についての話はなかったが、無免許でオートバイで首都高を仲間たちと暴走したことと、駐車場から自動車を2台盗んだことのやり取りがあった。
被告人はこれまで未成年の時から覚せい剤において都合3回摘発され、実刑も受けている。そして今回、被告人は組を破門されているが、かつても組を破門されながら、別の組に鞍替えしたことなどが検察官から攻撃の材料とされる。どこまで信用するかどうかは別にして、起訴事実を認めている被告人は皆「二度と繰り返しません」と反省を述べる。
そして弁護人の予想に反して求刑まで至った。懲役5年。残念ながら判決は2週間後ということで、その結果を私が知ることはできないだろう。裁判終了後、まだまだ傍聴したかったが、丁度昼休みになったのと午後から予定があったので、引き上げようとエレベーターを待っていたところ、近くで先ほどの被告人の妻が誰かと携帯電話で話をしている。「求刑5年。長いよ」。この求刑は私が予想したままの数字だった。
この傍聴記録、まだ続く。
(秀)
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