第1423話 ■上海ゲーム

 子ども達が大きくなって、老後はどこに住もうか、といった話をたまに家人とする。それぞれ年老いた親達は郷里に残したままだ。自分の老後とは言わず、親の老後のために田舎に帰らなければならなくなることも皆無ではない。ただいくらか条件が良い事は二人とも同じ郷里で家が近いことだ。

 いざとなったら私だけ今の家に残って、家人と子ども達は田舎に帰すこともあるかもしれない。しかし、家人は「今更もう田舎には帰りたくない」と言う。しかし平成元年、結婚直後は周りに友達もなく、毎日のように「帰りたい、帰りたい」と言っていた。それがやがて子どもが生まれ、その子どもの関係で友達ができるようになった。そして引越しを繰り返しながらも、友達はますます増え、今ではもう、「帰りたくない」と言うようになった。

 新婚当時、私の帰りを待つ家人は食事の支度が終わると暇な時間をパソコンの「上海」ゲームで潰していた。積み重ねられた麻雀牌から同じ模様のものをペアで取って消していくゲームである。寂しさをこれで紛らわしていたようだ。うまく全部の牌を消すことができると、龍の絵と「天晴」の文字が画面に表示される。私が家に帰ると、ちょっと得意気に、その龍と「天晴」の画面が表示されたままのことが度々あった。

(秀)