第1508話 ■カバー

 かつてカラオケを歌うことはその歌手のまねをするような雰囲気があった。例えばサザンの歌は桑田佳祐を真似るように。少なくとも私の周りでは、皆そんな感じだった。音程は手はもちろんのこと、リズムもきちんとトレースし、声の使い方まで真似をして、極端な場合、ものまねの良し悪しがそのまま歌の上手い下手だった。

 ところが最近、カバーという名の下、プロの歌手が他人の楽曲を歌うことが一般化してきて、元歌手の真似をしなくても自分なりに歌うことが認知されるようになった気がする。それぞれの表現力があって、カバーでも上手い人が歌うと上手い。

 かと言って、自分たちもそれに従い、全く独自の歌い方をすると周りにはそれが通用せず、「下手」と判断される。結局はお手本が増えただけで、元歌手ではなく、カバー歌手の真似をしてしまう。いずれもお手本があって、それに如何に近いのかが、我々一般人に許されている、上手い下手の判断の幅なのかもしれない。

(秀)