第1599話 ■新説日本史番組

 歴史という学問は、新たな事実によってこれまでの知識が書き換えられる可能性をそれぞれ多少は秘めている。実際に私が経験した中でも、かつて足利尊氏の絵として教科書に登場していた武士は全くの別人だった。だから、テストで「この人は誰ですか?」と問われたら、「分かりません」というのが正解だったことになる。

 さて、ここのところ日本史の新説をあつかったテレビ番組が2つレギュラーで放送されている。1つが、日本テレビの「日本史サスペンス劇場」。そしてもう1つが、テレビ東京の「新説!?日本ミステリー」である。何気なく見てると、二つの番組を混同してしまって、何曜日にやっている番組なのかを結局覚えていないという事態に陥る。

 日本テレビの方の番組はあまり知られていない歴史の出来事をドラマ仕立てで紹介していくことをベースにしていて、その中に番組のタイトルが示すようにサスペンスドラマの要素を組み入れたような構成だ。

 それに対し、テレビ東京の方の番組はその局の体質と言うか、煽り体質である。各テーマのキャッチもインパクトが強い。いくつか拾ってみよう。「上杉謙信は女だった!?」、「聖徳太子もペルシャ人だった!?」、「豊臣秀吉は忍者だった!?」、「坂本龍馬は明智光秀の子孫だった!?」、「徳川家康は春日局に暗殺されていた!?」、「大化の改新はなかった!?日本書記の捏造!?」、「聖徳太子はいなかった!?」、などなど。確かに以前にも聞いたことがあるものもあるが。

 後者の例は、どこか東京スポーツの見出しのようだ。最後に「!?」が付いているところが大胆なことを言っておきながら、最後までは責任を負わない。番組での検証もややいい加減だ。個人宅に伝えられている家系図を証拠として新説を裏付けている。そんなもん、嘘の可能性が高いでないか?。それなのに古いというだけで証拠として採用している、いい加減ぶりだ。このほかにも、論理の飛躍が見られる。

 娯楽番組として楽しむには十分面白いけれど、テレビで放送する上での責任を考えると後者は明らかに行き過ぎの番組だ。この番組の受け売りで、学校で先生に食ってかかる生徒がいないとも言い切れない。

(秀)