第164話 ■討入りでござる

 うっかりしている間にとうとう、討入りの日を迎えてしまった。今日は12月14日。もちろん忠臣蔵の話である。ところが、NHK大河ドラマ「元禄繚乱」は先月末に討入りを果たし、14日を待たずして、放送は終了してしまった。これでは、熟すのを待てずに食してしまった青い果実のようで、何となく後味が良くない。「今年の忠臣蔵もこれで終わりか。これで1年が終わったようだ。しかし、まだ1ヶ月あるのか」、こんな感じである。しかし、世間のこのような人々を救済するべく、やはり時期をあわせて、忠臣蔵映画の放送が組まれている。確認できただけでも、六本(深夜のBSというのがほとんどであるが)。一度にまとめて見ると、ストーリーがこんがらがりそうである。それにしても、「四十七人の刺客」の殺陣はお粗末だった。

 さて、私の一連の忠臣蔵コラムの問題は「日本人はなぜこうも忠臣蔵が好きか?」ということであった。ストーリーを冷静に見てみれば、私怨による集団殺戮の話でしかない。しかし、その中には武士道や忠義、はたまた政府(幕府)への批判などが込められている。日本人は判官びいきで弱い者を支持する人が多い。忠臣蔵はシャープ兄弟にやられ続ける力道山を(古すぎたか!?)ひたすら応援し、逆転に転じた途端に一気に爆発する歓声と感動に近いものを感じられる時代劇である。蛇足だが、あのガメラも同様に一度目はやられるが、最終的に勝利するようにできている。力道山も忠臣蔵も話の結末は分かっているが、クライマックスに至ったときの快感は何事にも尽くしがたい。雪の中の討ち入りのシーンは何度見ても鳥肌が立つ。

 忠臣蔵の舞台には実にうまく季節感が描かれている。内匠頭切腹の際には桜を、そして吉良邸討入りの際には雪を。やはり、討ち入りに雪は欠かせない。これが、真夏の夜の出来事ではあまりにも風情がない。この描写が実に美しいのは「忠臣蔵外伝 四谷怪談」であると思う。BSが見れる方は今晩いかがだろうか?