第1757話 ■圓生襲名問題について

 落語の世界は歌舞伎の世界ほどではないが、襲名においてはやはり血縁関係によるものが多い。現林家正蔵、三平しかり。実力から言えば六代目小さんは小三治が襲名するのが妥当だったと思うが、先代の実子が襲名した。この血縁襲名を将来にわたって見通すと、柳家花緑が次の小さんを襲名するだろうし、桂三木男が桂三木助を襲名するのは、良し悪しや妥当性は抜きにして、血縁だからできることだ。地味なところでは、三遊亭窓輝が真打昇進時に改名しなかったのは、いずれ親の圓窓を襲名するからではないかと私は睨んでいる。

 続いての襲名のパターンは一番弟子が師匠の名前を襲名するパターン。もちろん例外はあるが、比較的多い事例である。これを同様に将来に渡って見通すと、正蔵の名を、たけ平が継ぎ、小さんの名を花緑を経由して、初花(しょっぱな)が継ぐことになる。想像してみると面白いが、実際にそんなことはないだろう。きっとこれらの名前の場合は、血縁が途絶えた時点で一旦空席になるのではなかろうか。

 さて、今回私がこの襲名の話題を取り上げたのは、三遊亭圓生の名の襲名について触れたかったからである。圓生の名は三遊亭の亭号の中ではその源流であり、一門の中で最高の名跡とされる、いわゆる「止め名」で、同様の扱いの名跡としては林家正蔵、柳家小さん、古今亭志ん生などがある。この圓生の名は6代目を最後に空席となっているが、この名の襲名が今話題となっている。

 6代目が亡くなった後、その未亡人を中心にこの圓生の名を「もう誰にも継がせない」と連名で書面を残していた。その中には先代の圓楽も一枚噛んでいた。それがしばらく時間が経ったあるとき突然、圓楽が楽太郎に圓楽を襲名させ、圓生の名を自分の一番弟子である鳳楽に襲名させると勝手に決め、それが関係者に知らされることなく新聞で報道された。

 鳳楽は既に圓生の遺族と交渉を進めているらしいが、圓生の直弟子であった円丈が「直弟子を差し置き、孫弟子が襲名するのはおかしい」と噛みつき、「圓生争奪杯」の落語会を開くなどのイベントも行われた。これはそもそも圓楽と円丈との確執よるものも多分に影響していると思われるが、円丈が圓生襲名に対し、どこまで本気なのかは今イチよく分からない。

 しかし圓生争いは急にさらに複雑になった。圓生の二番弟子だった圓窓が圓生の遺族と襲名について話し合いを始めていることを落語協会に対して明らかにした。これはかなり本気のようだ。協会からの話でもかなり実現性が高い感じがうかがえる。頭一つリードしている感だ。最終的に圓生の名が圓窓の元に転がり込む可能性が出てきた。そうなると冒頭に書いた、息子の窓輝がいずれ圓窓→圓生となるのだろうか?。

<今回は各自敬称略>

(秀)