第1791話 ■死刑判決の蛇足

 横浜地裁で行われていた裁判員裁判で、初めての死刑判決が出た。裁判員裁判初の死刑判決とあって、報道も熱心だ。被告人は二人を殺害し、強盗殺人罪などで起訴されていた。死刑の求刑は裁判員裁判としては2人目だった。

 死刑判決をめぐる判例としては最高裁が示した「永山基準」というものがあり、これが死刑か否かの判決を出す上での基準となっている。別の経験則に基づく基準としては、3人を殺害すれば、ほぼ間違いなく死刑。1人の場合、基本的に死刑になることは少ない。問題は2人を殺害した場合に判決が分かれる。よくドラマや映画で犯人が逆上し、「一人殺すも二人殺すも同じだ!」と銃を乱射するようなシーンを目にするが、殺害した人数は判決に大いに影響する。

 今回の裁判、おそらく最終弁論と思われるが、被告人の弁護人は「わずかでも死刑をためらう気持ちがあれば死刑にしてはならない」と情に訴える策に出たようだが、これはそれほど積極的に死刑を回避すべき材料がないということを表しているようにも思える。それにしても、いざ一般市民が死刑の判決を出すには計り知れない苦悩があるだろう。「知る権利」なんていった野次馬根性ではなく、正しい判断をするために、証拠品を見ないといけない。その中には遺体の写真もあるはず。そのような精神的な苦痛を感じながら、合意に基づいて出された死刑判決である。

 ところが今回の死刑判決を言い渡した裁判長は主文の後に「裁判所としては被告に控訴することを勧めたい」と発言したらしい。これが裁判員と裁判官の総意なのか、単なる裁判長の個人的な考えなのかは分からないが、せっかく出した判決を自ら否定するような発言はするべきでない。裁判員に対して失礼だし、何よりもそんな無責任な形での死刑判決を言い渡された被告人に対して失礼だ。

 来年、3年目を迎える裁判員制度だが、私の身近に裁判員候補の通知が最高裁判所から先日届いた。

(秀)