第429話 ■スピードという品質

 年末ジャンボの行列や初詣、福袋を買うための行列など、年末年始は特に並んで、待たされる事が多い時期かもしれない。私は並ぶことが嫌いだ。正しくは待たされるのが嫌いというのが良いかもしれない。まあ、並ぶのと待たされるのは必ずしもイコールではない。通勤時電車に乗るために並ぶが、別に待たされていると意識するよりも短い時間で次の電車が来るので、こんなことでは腹が立たない。むしろ苦痛は乗り込んだ先の満員電車の中にある。

 買い物の際、レジなどで待たされると腹が立つ。いくら安かろうが、いくら旨かろうが、待たされる事だけで私の満足度は大きく減点される。よって、ディズニーランドでの家族サービスは苦痛である。しかし、この待たされる事の不満を逆手にとって、それをサービスの中心に据えるとそれは新しいビジネスチャンスになるかもしれないと思えて来た。何も極端な話ではない。バスではなく、タクシーに乗るときの客の心理をビジネスに生かせないか?、という発想である。

 モノを販売する事やそれを届ける事は工場でのモノの生産に比べると、ロスの時間がとても大きいが、この労働の稼働率を限りなく一〇〇パーセントに近づければ、サービスにスピードという品質を加えることが出来る。但し、この場合の稼働率のアップは必ずしも生産性のアップにはつながらず、むしろマイナスの場合がある。配送などは都度送るよりもまとめて運んだ方が遙かに生産性は良いに違いない。

 私は欲しいものがすぐに手に入るなら多少高くてもそれを選ぶだろう。さて、その加減についてであるが、中には困った時などに「金は幾らでも出す」などという人がいるがそれはほとんどのケースにおいて嘘である。晩ご飯のおかずを聞いて返って来る「何でも良い」という返事と同じくらいの重みしかない。

 私はせっかちである。欲しいと思うとすぐにでも手に入れたくなるたちである。普通、車を新車で買うとなると一~二週間、もちろん車種によってはそれ以上の時間が掛かる。しかし、欲しいからにはすぐにも欲しい。翌日とは言わず、今日乗って帰りたい具合だ。印鑑証明と車庫証明書を持って行ったら、二時間ぐらいで手続きをやってくれるところがないだろうか?。自転車を買う時ぐらいの感覚で手に入ると面白そうだ。

(秀)