第525話 ■メール妄想

 最近、電車の中で携帯電話でメールをやっている人が増えた。読んでる人あり、打っている人あり。電話で話されるよりは良いが、周りをそんな人々に取り囲まれると、せわしく、うっとうしくって、ヤダ!。電車に乗る前後にメールが来てないか確認している人もいるが、あいにく、何も届いていなかったようだ。もちろん、電車待ちしているホームにも携帯メール人間は列をなしている。

 吊り革に掴まっている私の前で、ともに20歳代の男性サラリーマンが二人、並んで座っている。手にはもちろん、携帯電話。一方は盛んに両手を使ってメールを打っている。一方の親指でテンキーを叩き、もう一方の親指で、変換、確定のためのキーを押している。入力のスピードから判断してなかなかの強者らしい。入力が終わって、送信したようだ。

 すると、その隣の男も盛んに指を動かし始めた。それぞれメールを送り終わると、その二人が顔を会わせた(ような気がした)。私がこの電車に乗る時には既にこの二人がこの位置に並んで座っていたので、お互いが知り合いなのかどうかは分からないが、さっき送ったメールがお互い宛だったら、と思うとゾッとした。

 それ以来、携帯でメールをしている人を発見すると、周りを見渡し、同じように携帯でメールをしている人を探してしまう。そんなはずはないと分かっていながらも、そのお互いがメールを送り合っているのではないかという妄想が浮かんでしまう。あっ!、私の携帯にメールが届いた。その姿を確認すると、向こうにいる見ず知らずの女性が私に微笑み掛けてきた。慌てて、返信を打とうとするが….。携帯のバイブレーションで目が覚めた。

(秀)