第618話 ■大学で学んだこと

 現在学生の方には申し訳ないが、正直なところ、大学で学んだことがそのまま就職して活かせることはほとんどない。特に文科系は。技術的な分野でも大学の貧困な施設よりも企業の方が恵まれた環境で、こちらの方が進んでいたりする。では、企業は学生にどんな能力を期待しているかと言うと、発想力や問題解決能力といった、素養である。また、他人との折衝力であったりする。十分に大学での学業を終えた人はそれに見合ったこれらの能力を身に付けていると判断し、企業は採用する。公務員もおそらくそうだろう。

 それでも企業があまたいる候補者の中から条件に適合した人かどうかを短期間に見極めるのは難しい。そこで客観的な指標として、学歴、多少なりとも良い大学の出身者がそこに至る過程で競争を勝ち抜いて来た証左として有利となる。しかし、会社に入ってしまえばあまりそんなことは関係ない。例えば中途採用となると、学歴よりも前の会社で何をやって来たか?、どんな仕事を任せられるか?、が最も重要であろう。もし学歴が就職後も影響するようなところは、今後今以上の競争力を持って市場に影響を与えるような成長をするとは考えにくい。

 私が大学生の時、農学部(私は農学部ではなかった)ではバイオテクノロジーが華やかで、企業からの求人も良く(これに限らず、全体的に売手市場のムードではあったが)、それを反映して受験倍率も非常に高かった。ところでこのブームの行き先はどうなったのか?。素人考えで申し訳ないが、(その一部は)遺伝子組替作物などやっているのではないか?。そうだとすると、世間的にはかなりの負のイメージがある。彼らもまさかこんな状態になると思って学んでいたはずはなかろうに。

 同じ時期に理工系では「超伝(電)導」がブームであった。夢のような技術はその後どうなったのだろうか?。所詮、机上のもので実用化には無理なものだったのだろうか?。このような例に限らず、たかだか4年程度に得た学問で、その後の40年近くの勤労生活を支えていられるほど現実は甘くない。

(秀)