第632話 ■名簿の商売

 ちょっと前のこと、会社に電話があった。いつものように不動産や先物による投資の営業の様だが、ちょっと違う。「○○大学出身の秀野さん(仮名)ですか?」と確認を終えると、自分も同じ大学の出身だと自己紹介を行う。しかし学部も違えば在学期間もずれている。同じ大学という以外に両者の共通項はない。ただそれだけなのに、セールスの電話を掛けてきた。

 予想通り、投資のセールスだった。同郷だろうと、同窓だろうと投資には全く興味がわかない。それ以前に同じ大学を出たというだけで勤務先に電話をしてくる図々しさに不快感さえ感じた。「どうしてここの電話番号が分かったのですか?」と尋ねると、案の定、「同窓会名簿で」と言いやがる。「是非一度ご挨拶にでも」と言うのを、「投資なんかに興味はない。どうせ来てもらってもお互い時間の無駄ですよ」と何度も断るが、結構しつこい。挙げ句には勝手に面会の日にちを設定しようときたので、「あなたのために時間を割くわけにはいかない。来てもらっても困る」と断ると、いきなり向こうからガチャンと電話を切った。こんな不快なセールスも久しぶりだ。

 確か大学の同窓会は学部毎に分かれていたはず。よって他学部の卒業生となると同じ大学の卒業生としても他学部の同窓会名簿は不正に入手したことになろう。同窓会の名簿とやらもこの辺の自衛には配慮して発行いただきたい。しかし、世の中には不徳な名簿商売というのがある。セールスなどの目的で名簿を求めている人は多そうだ。以前ある名簿販売業者のホームページを見た。「在庫情報」というコーナーがある。「資産家令嬢」なんて、いったいどんな基準で、どうやって集めたのだろうか?。

 我が社でもセールスの電話で結構迷惑を受けている人は多い。ある日、社内イントラの掲示板に「最近、セールスの電話が多くて困っています。何故でしょうね?」というのが書き込まれていた。そこで私は「うちの会社の電話番号簿が名簿屋で売られているからだと思います」と、その会社のURLをあわせて書き込んだ。それから、確か2日後だったと思うが、総務部からこの電話番号簿流出事件に対して、管理徹底の全社通達が出た。それまで年に1度のペースで印刷冊子として配布されていた電話番号簿は私のこの書き込みでイントラでの電子電話帳システムに移行した。

(秀)