第658話 ■バンドの名前

 計画だけあって、未遂と言うか、そのまま放置されて実現していないものが我が人生にも結構多い。大学に入って、同じ学部の先輩と「バンドをやろう!」と決まったは良いが、良かったのはその一瞬でしかなかった。バンドの名前は「○岡商事(○の部分は伏せ字)」、と即決まったのに。

 その先輩の名前は「○岡章二」。以前、公衆電話からコレクトコールを申し込んだ際に、オペレータに名前を聞かれたため、フルネームで答えたところ、「前株ですか、後株ですか?」と聞かれたという実話を持っている。オペレータは章二を商事と勘違いしてしまったようだ。

 さて、バンド「○岡商事」ではライブのことを「株主総会」と呼び、このためにチケットは「株券」、観客は「株主」と呼ぶことも決まっていた。先輩がリーダーで「代表取締役ボーカル」、私は「専務取締役ギター」といった具合。よって、バンドの練習は「取締役会」となるはずだった。ところが、この取締役会すら一度も開催されることなく、この構想は自然消滅してしまった。その最大の原因は取締役(メンバー)が先輩と私の二人しかいなかったことに他ならない。

(秀)