第660話 ■無線LAN

 会社の先輩が家を建てたときのことなので、4年近く前のことになると思う。どこまで本気か分からない(自慢したいためか)が、いろいろと相談を持ちかけられた。そのとき私が言ったことは「せっかくの注文住宅で、自由設計ができるなら、壁の裏などにネットワークケーブルを引き回し、各部屋にネットワークの差し込み口を作っておいた方が良いですよ」、だった。当時まだブロードバンド環境となると専用線を引くしかなく、家庭内でLANを引くケースも少なかった。ほとんどの人が家庭ではダイヤルアップ接続だったはず。

 結局、その先輩は床暖房の方が魅力的だったらしく、このプランは採用されなかったが、今思えばそれで良かったと思う。「そのうちにもっと回線状況も良くなって、利用料金も下がるだろう」という読みに間違いはなかったが、その実現速度までは正しく予想できなかった。少なくともADSLなんて言葉、その頃は知らなかった。更に無線LANもこんなに早いペースで家庭に普及して来る(まだ途上であるが)とは思っていなかった。しかしどうだろうか?。ブロードバンド(ADSL)も無線LANも既に我が家にある。

 コードレス電話器が登場してきたときのことを思い出して欲しい。古く、電話は玄関の側、廊下に置かれていたりした。サザエさんちは未だにそうだ。それがコードレス電話の登場で家中どこでも、トイレであろうと話ができるようになった。無線LANはまさにあの感覚である。無線LAN導入の目的の1つに、ケーブルの敷設が困難だから、というのがある。しかしデスクトップマシンなら有線だろうと無線だろうと、一旦使い始めるとそんな意識は薄れてしまう。それ以上に無線LANの便利さが実感できるのは、ノートパソコンなりを家中持ち歩いて、LANケーブルを気にする必要がないということである。願わくば、電源コンセントからも解放されたい。

 この季節、コタツでのパソコンはうれしい。これまではリビングの隅にあるHUBからずるずるとLANケーブルを引きずっていたが、もはやその必要はない。ノートパソコンを開くだけ。ついでにHUBも撤去。さらに、ちょっとしたメールのチェックぐらいなら、無線化したシグマリオン(第410話参照)で即できる。こんなことは、携帯電話などとの組み合わせでこれまでも可能であったが、通信料を気にせずに楽しめるのが何よりうれしい。しかも速い。

(秀)