第696話 ■義理チョコ大作戦

 世の女性諸君、今年もこの日がやってきた。そして同志男性諸君、やはり今年もこの日はやってきた。毎回新しい年のカレンダーを手にした直後にまず自分の誕生日が何曜日かを確認し、その次にバレンタインデーが何曜日かを確認したりしなかっただろうか?。私はした。

 お菓子メーカー等の策略によるものと分かっていながらも、たかだか数百円(本命はそれ以上だろうけど)のチョコでありながらも、一喜一憂が隠れている。そしてこの市場というか、このイベントは本命チョコではなく義理チョコによって支えられているような気がする。バレンタインデーが日曜日や土曜日となるとチョコの売れ行きが大きく減少してしまうのがその証拠だ。

 義理チョコをめぐる悲喜こもごもに注目してみよう。義理チョコは日常の生活サイクルに沿って準備される(と思う)。その日に会うかどうか分からない人の分まで用意されることはまずない。あまりお金を掛けるのももったいないのでできるだけその数を減らしたいと思っている。そこで相手を選抜する。日頃の付き合いがあるので、とりあえず同じ部署の男性ぐらいには、と収まる。「義理(チョコ)で~す」、「皆からで~す」と、そのさりげなさがポイントであろう。

 一方男性は義理であろうと、少しでもチョコに近づこうと、会社内を他の部署まで遠征してみたりする。いくら日頃から面倒をみていようとも、それが日常のサイクルに沿ったものでなければ義理であろうと自分の分のチョコまで用意されている可能性は低い。中には自分のところでチョコの箱を広げ、「ご自由にお食べください(義理チョコ)」と貼り紙をする女性もいたり。

 同じ部署の男性達にせっせと義理チョコを配る女性あれば、「私、義理チョコなんか関係ありませんから」と、いう女性もいる。それは本人の意思であるため尊重して当然であるが、ただ、知り合って最初のバレンタインデーとなるとその辺の事情がわからないので、期待数にカウントしている男性もいるかもしれない。

 こんなバッドコミュニケーションが気まずく、悩ましい一日である。

(秀)