第708話 ■日直の仕事

 朝はいつもより早く登校し、教室の窓を開ける。今日、僕は日直だ。窓を開け終わると、職員室に行って「学級日記(日誌)」を受け取ってくる。日直は座席の順番で二人一組となってまわって来る。自分達の机の上には「日直」と書かれた三角錐が置かれている。中にはうっかり日直だったことを忘れたり、分かっていてもとぼけて朝早く登校してこない輩もいる。

 公に対する日直としての初仕事は「朝の会」の司会である。ここで「今日の目標」なるものを決める。しかしこの目標にはあまり意味がなかったような。授業の終わるごとに黒板を消し、そして窓を開け、黒板消しをはたいておく。今では黒板消しのクリーナーが各教室に備えられている。

 給食時間には日直のいずれか一方(二人のうち一人)が教卓で給食を食べる。わざわざ教卓で給食を食べる理由は食事開始の「合掌」を行うためである。「手を合わせて下さい。いたーだきます」。「いたーだきます」。

 一日の終わりは「帰りの会」の司会である。翌日の時間割の伝達や一日に生活の反省などが行われる。しかし、会の半分以上は先生の話だったような気がする。

 これで、下校の時間となるが、日直にはまだ仕事が残っている。学級日記を書くことである。学級日記にはその日の時間割、教科内容、欠席者などを決められた書式にしたがって記入する。学級日記は各学期に1冊の冊子になっている。それに日直が気づいたことを自由に記載する欄があり、それに対して担任の先生が感想などを書いてくれる。

 あとは黒板の「日直」の欄の自分達の名前を消して、明日の当番の名前に書き換え、教室の窓を全部閉める。日直の三角錐を次の席に移し、そして書き上げた学級日記を職員室まで持って行って、長かった日直としての一日の作業は終わりとなる。

 以上が私が通った小学校の昭和50年代前半の日直の仕事の全貌である。ごく稀な確率で、日直の日に席替えが行われ、翌日もまた日直という不運な者もいたりする(かな?)。

(秀)