第722話 ■CyberBowling

 パソコンのマウスを裏返した形のものにトラックボールというのがある。ボールを直接転がしてカーソルを動かす。同じようなものはゲームセンターにもある。まあそれでもその玉は野球のボールぐらいの大きさで片手で転がす程度の大きさだ。それがボウリングの玉だったらと想像して欲しい。危ないので穴は開いていないが、そのゲームのコントローラーはボウリングの玉を転がすトラックボールなのだ。両手でこれを転がす。

 このコントローラーで単にピンを倒すだけのボウリングゲームなら私もコラムになんぞ書こうとは思わない。前方の画面に表示されているのはボウリングのレーンではなく、銀座の街並みなのである。勝鬨橋らしきところから、晴海通りを西に巨大なボールを転がす。途中の道は省略され、橋を過ぎるとすぐに銀座4丁目の交差点が見え、数寄屋橋の高速道路高架下に立つ巨大ピンが見えてくる。レーンの長さ約300メートル、玉の大きさは約3メートル、ピンの高さは約5メートルといったところか。

 これがお台場のメリアージューというゲームセンターにある「CyberBowling」ゲームのアウトラインである。街並みを巨大なボウリングレーンと見立てている。もちろん街にはいつものように車も都バスも走っている。それらを避けながら玉を転がしても良いし、それらに当たったからといって、マイナスになる事はない。ただ、玉のコントロールが失われ、制限時間の20秒以内にピンまでたどり着かず、タイムアップになってしまったりする。タイミング悪くバスが交差点を横切り、玉の進路をさえぎる事もあるし、バスに弾き飛ばされ、途中の交差点などで玉が左右に曲がってしまうとガーターとなる。また、地下鉄の入り口にボールが転がり落ちてガーターとなる。トラックボールを手前に転がせば玉は戻ってくる。

 これ以外にもコースはサンフランシスコの坂道やローマの街並み、船上などがある。サンフランシスココースでは路面電車が玉の邪魔をし、ピンは坂を登りきったところにあり、玉に相当の勢いがないと最後の坂を上手く登りきれない。私の得点は初回(銀座コース)71点、2回目(サンフランシスココース)119点であった。店員の話によると初めてのときは3,40点ぐらいなのらしい。熱中し、ボールを両手で転がし続けたために、ゲーム中、手の平はもちろんのこと、指先までも痛くなった。高々玉転がしに興じている、平均年齢30代半ばのおじさん6人の姿を想像して欲しい。いや、けど本当におもしろかった。

(秀)