第754話 ■夢のカリフォルニア

 これは「平成版・ふぞろいの林檎たち」だと、ある雑誌では評されていた。私もその記事を読む前から同じような考えである。堂本剛演じる終(シュウ)、国仲涼子演じる恵子、柴咲コウ演じる琴美、この3人が主人公となり、様々な悩みを抱える今風の林檎世代を描いている。

 話は中学校のクラス会から始まる。卒業前に転校してしまったこともあり、クラスでの存在感が薄かった終。この日もほとんどの級友が彼のことを覚えていない。勉強もできてルックスも良かった恵子は相変わらずクラスの人気者であるが、彼女を取り巻く現状の生活には閉塞感を抱いている。そこにかつてはブスと嫌われていた琴美が見違えるような美しさで現れ、クラスメイトの注目を浴びる。彼女は今モデルとして働いている。

 この3人と今回のクラス会の幹事である孝平の4人は二次会のカラオケに行かず、思い出の中学校に夜中忍び込んだ。かつての教室で、かつての席に座り、卒業からのそれぞれを生活を語りだす。三流大学で就職もままならない終。大学受験で挫折し、家を出た恵子はアルバイトで働いている現在の職場にも不満を抱いている。一方、かつてブスと嫌われていながら、現在はモデルとなって生まれ変わったかのような琴美にも自分に接してくれる他人がどこか信じられない。それぞれが自らの存在や生き方に強く疑問を抱いている。

 一通り4人が話し終わった後に、そろって屋上に昇ってみることになった。そこで突然、孝平が「この先何か良いことあるのか?」、「この先良いことなんかあるはずない」と、そして「俺は、今日で終わりにする」という言葉を残し、屋上から飛び降りて自らの命を絶った。この死が残った3人の生き方に大きな影響を与える。「自分は生きているのか?」と。

 「ふぞろいの林檎たち」同様、社会の第一線から取り残された者たちが主人公のドラマである。トレンディドラマのように豪華なマンションに住み、恋愛だけが悩みの主人公ではなく、それ以前に自分の存在自体に悩む人々が主人公である。家庭内にも問題(親父のリストラ)を抱えている。実際の社会はこんな人々たちで成り立っているはずだ。ただ、美男美女がこれらを演じるところにリアリティへの不満をちょっと感じるけど。

 「夢のカリフォルニア」というタイトルにはまだ見ぬ理想の街という意味がこめられている。この曲の歌詞をそう説明したのは、終のバイト先の中林(田辺誠一)であった。彼は大手企業をドロップアウトして運送会社で働き、終とペアでトラックで集配の仕事をしている。この中林が今後、終との絡みで彼に大きな影響を与えていくキーマンだと私はにらんでいる。

(秀)