第777話 ■消しゴム版画家

 消しゴム版画家、ナンシー関さんの突然の訃報に大変驚いている。彼女は消しゴム版画という独自の技法で世に出、その一方で辛辣な文面のコラムを書き、特に番組批評やマスコミ批評の内容は私も好きだった。39歳。思ったより若かった。まさに突然の死。あの体格からして、日頃の不摂生が原因だったのだろうか?。

 蛇足だがうちの家人はナンシー関を知らず、ゼンジー北京(手品師)、南州太郎(コメディアン)と勘違いしていた。

 世が世なら彼女は写楽であり、歌麿である。対象が芸能人で、かつ、材料が消しゴムであるがためにサブカルチャーに区分されてしまっているが、あれは立派な版画芸術だと私は思っている。江戸時代とまでいかなくても、時代が早ければ、例えば明治時代なら、写実主義版画家として認知されたかもしれない。遅まきながら、彼女が書いた本(ほとんどがコラムだが)をインターネットで買い求めた。

 これからも法廷で裁判の様子を描く、法廷画家ならぬ、初の法廷消しゴム版画家(法廷は刃物持ち込み禁止だからダメか)など、消しゴム版画家として、その活躍の場をどんどん広げて欲しかったのに、残念で仕方ない。できれば御遺影はご自身の手による版画の自画像でお願い致しまする。合掌。

(秀)