第851話 ■ウェルズからの招待状(1)

 クレオパトラがエジプトに現れた。天から降ってきたのか、地から湧いて出てきたのか、その現れる瞬間を見たものはいないが、砂漠に一人佇むその美しき女性は自らをクレオパトラと名乗った。確かに目鼻立ちがくっきりとした美形であるが、人々が思っていたよりもその女性の鼻は低い。警察に捕らえられ、話を聞こうにも、彼女は興奮し埒があかない。クレオパトラと名乗ることと、その様子から気が触れた不審者として扱われた。彼女が身に付けているもの、金銀、それに石の類は皆本物で、純度も極めて高いものだった。

 地元ではクレオパトラの出現は大きな話題となっていたため、外国のメディアにも伝えられ、日本でもワイドショーなどが軽く扱うまでにはなっていた。しかし、次に現れたのがプレスリーであり、マリリンモンローであったため、その時点で世界的なメディアでの大騒ぎとなった。クレオパトラの場合はさておき、この二人が生存していたのはそれほど昔のことではない。第一、写真や映像、それに指紋なんかも残っている。驚愕すべきは二人とも、かつての本物と同じ指紋をしていた。続いて、やれ声紋だ、DNA鑑定だ、といった声が挙がるのも当然のことだろう。もちろん、寸分違わず合致していたことは言うまでもない。

 マスコミはクローン人間の出現と断定し、それについては激しく反対を唱えるものの、現れたプレスリーやモンローを攻撃することはなく、それぞれが彼らが現れるに至った経緯を知りたがった。

「えっ!、今が21世紀だって?。信じられないね。けど世の中の変わりようを見ると、あながち嘘でもなさそうかな。でも、21世紀ってロボットが街を歩いていたり、車が空を飛んでいるんじゃなかったかな?」。
「今がもし21世紀だとすると、まるでタイムマシンに乗ってきたようじゃないか?」。

 どこまでが本気でどこからがジョークか分からないが、プレスリーはこう言った。

<つづく>

– – この話はフィクションです。- –

(秀)