第879話 ■ガム

 チョコレートにキャラメル、キャンディー、それにガムというのが、かつての子供の好きなお菓子の代表だった。和物が好きな場合は煎餅でもこれに加わるのか?。しかし、最近はグミなる妙なものを好んでいる子供も多い。硬いものを噛まないので、顎が弱ってしまってしょうがない。

 さて、今回はガムである。特に子供向けの板ガムについて話をしたい。どういう理由で子供の頃にガムを買い求めていたかをいろいろと思い出してみるが、取り上げてガムの味が恋しくて買っていたわけではなかったようだ。チョコやキャラメルなどのように最終的に飲み込んで消化してしまうものに比べると、クチュクチュ口の中で噛んで噛んで、そのうちポイっと吐き出して捨てるのが惜しいと言うか、何とも欲求不満なお菓子だ。味がある間噛んでようと、まだ噛んでおくべきなのか、最初は随分悩んだ。

 それでも多少余った小遣いでガムを買ったのは事実である。「多少余った小遣い」というのが、当時の私のガムに対する心情を表現している。あくまでもメインではなく、そもそも駄菓子屋で子供を相手にしたものは、20円とか30円だった。当時、ロッテのグリーンガムやクールミントガムが50円で子供向けのガムとは別の部分に、扇形にガムを陳列する、ロッテの小洒落た専用のケースに並べられていた。第一、「あんなからいガム」として、我々はそれらに見向きもしなかった。

 正直なところ、私が子供用のガムを買っていた理由は、ガムそのものよりもその包装紙にあったと思う。板ガムには直接ガムを包装した銀の紙の外側にもう一重、帯が巻いてある。この帯が楽しみだったのだ。そのうち一つはシール。糊が付いてものではなく、裏紙を剥いでフィルムをこすって、目的物に転写する。一旦貼ると綺麗に剥ぐことは難しい。タンスや壁とかに貼って、ずいぶん親に怒られた。

 残りのうちの1枚はクイズやなぞなぞが書かれており、答えは小さな文字で天地逆にその紙の隅に印刷されていた。キャラクターのプロフィールや秘密が書かれている紙もあったなあ。そして、残りの1枚がプレゼントの応募券になっていたりした。これで私はタイガーマスクのマントとレインボーマンのソフトビニール人形を当てた。どうやらこれで味をしめ、ガムを買い続け、捨てるのももったいないから中身を食べていたような気がする。

(秀)