第892話 ■シャープぺン

 私が初めてシャープペンを手にしたのは小学1年生の2学期のことだった。夏休みに行った親戚の家で、従兄弟からシャープペンを見せられ、その存在を知ってしまった。家に帰るや近所で本と文房具を売っている店で300円のシャープペンを買った。それほど種類もなく、至ってシンプルなシルバーのそれであった。ノック式、0.5ミリ。

 とりあえずそんなものを持っているのはクラスにたった一人で、後に私の影響で二人になったものの、その当時は大勢に影響はなく、先生から注意を受けることなどなかった。ところが学年が進むにつれて、シャープペン人口は拡大を続け、上級生になると、誕生会のプレゼントとして500円程度のシャープペンを持っていくのが恒例化した。このため、誕生会をやると筆箱に入りきらないほどのシャープペン持ちになれた。

 そうなると先生の目に付くようになって、シャープペン禁止令が出てしまった。理由は「シャープペンは力が入らないから」。まあ真っ当な理由とは到底言えないが、元来子供を相手にした先生の言い分なんかそんなもんだ。ところがそれ以上に厄介なのは、その先生の言葉を真に受けて、隠れて使っていようものなら、「いけないんだ、いけないんだ。先生に言ってやろう」と騒ぎ立てる輩である。皆さんの周りにもそんなキャラクターの存在があったのではなかろうか?。

 そして、いつも芯を貰ってばっかりの奴にも困ったし、「ちょっとペン貸して」と友達に頼まれて、持ち合わせているシャープペンを貸してあげるのは問題ないが、その際にシャープペンに付いている、あんなに小さい消しゴムを、しかも自分は使わずにいたのに、それを勝手に使われてしまったときにも、無性に腹が立ったもんだ。

(秀)