第893話 ■コロッケ屋

 会社から歩いて5分くらいの所にその店はある。昼間は定食を出している。表向きはとんかつ屋なのかもしれないが、コロッケも相当美味い。コロッケ定食他、揚げ物の定食屋である。夫婦と思しき二人でやっている。「コロッケ食いに行こうか?!」というのが決り文句である。その日我々は4人でその店に足を運んだ。

 コロッケは確かに美味い。しかしこの店にはやや難点がある。まず、店が狭い。そして料理がなかなか出てこないのである。席に座って注文を済ませてからも10分は待たされる。ランチタイムには致命的である。注文を受けてから揚げるだけでなく、注文を受けてから仕込むのである。エビフライもイカフライもコロッケも、注文を受けてから、衣をつけ始める。席も少なく、料理もなかなか出てこないため、客の回転がすこぶる悪い。ちょっと出遅れてしまうと、店の外で相当待たされてしまう。これからの季節はちょっとつらいかも。

 定食で勘定は概ね、900円程度である。かなり高価な食事だ。まあ、いつもこんなものばかり食べているわけでなく、翌日は吉野家だったりする。勘定を済ませ、来た道を戻り会社の前まで来ると、カレー売りの軽自動車が止まっていた。このカレー屋は好評で、週のうち3日来るが、いつも行列ができている。

 以下そのときの我々の会話。
「あっ、今日カレー屋来てたんだ。カレーでも良かったなあ」
「あのコロッケ屋も今の店やめて、カレー屋にすれば良いのに。客の回転率も上がるだろうし」
「テイクアウト中心だと店もそれほど広くなくて良いし」
「けど、あそこの親爺、こだわってとんかつ揚げてカツカレーとかやるんじゃない。コロッケカレーとかも」
「じゃあダメだ、さばけねーー」

(秀)