第921話 ■鎮痛薬

 頭が痛い。何かしらの悩み事があるわけでなく、文字通り、肉体的に頭が痛い。風邪をひきかけているのか?。鎮痛薬を飲んでしばらく経つが、まだ効いて来ない。かと言って、直るのを待っているわけにもいかず、本日の締め切りとの格闘を始めよう。悩みの種と言えば確かにこれはそうだが。

 苦虫を噛み殺し、眉間にしわを寄せながら、せっせとキーボードを叩き続ける今の私の姿はきっと、芥川龍之介や太宰治の肖像写真のようになっているに違いない。ただ、書いている中身は随分違う。

 高校生のときに友達の家で同様に頭が痛くなったことがある。そう言うと、友達は部屋から消え、すぐに鎮痛薬を持って戻って来た。貰って素直に飲むとすぐに効いた。その友達の家というのは産婦人科医院で、彼が持ってきた鎮痛薬は市販薬とは格段の違いがあった。

 会社で頭が痛くなったときはどうするか?。医務室に行くのも手であるが、何かと面倒くさい。席の近い女性達に「頭痛いんだけど、鎮痛薬持ってない?」と聞いてみる。何人かに聞いてみると、誰かしら持っていて、くれる。それ以来、私も多少の量の鎮痛薬は机の引出しに入れておくことにした。しかし、不思議なことに、こういう風に備えていると、会社で頭が痛くなることはまずない。私が女性に鎮痛薬を求めることはあっても、彼女達が私に鎮痛薬を求めてくることはない。当たり前か。

(秀)