第948話 ■青年実業家

 一般的に職業それぞれに対する、スタイルのイメージと言うものが存在する。普通に我々が目にする姿のものであれば、そのイメージが実物と大きく違うことはまずない。しかし、イメージだけが先行して一般に目にすることのない職業となると、誤ったイメージによってそれが支配されてしまっていることが多い。例えばテレビ局のディレクター。セーターを肩から掛けていそうだ。映画監督はハンティング帽にニッカポッカのズボン。この監督像はコントのネタとして登場し、固定化された。ついでに泥棒は口の周りにヒゲがあり、唐草模様の風呂敷を持っている。足は地下足袋。けどそんな泥棒なんかいない。

 ○○家という職業は胡散臭い。作家、画家、芸術家、音楽家、実業家、などなど。偉そうだが、それを職業と名乗る基準が極めて曖昧だ。極めつけは発明家。近所で笑われている困ったオヤジになってしまう。別名、「下町のエジソン」なんかまさにそうだ。ところで、実業家という言葉はあまり単独では使わない。頭にその人の属性を表す言葉を付加するケースが多い。女性実業家、若手実業家、それに青年実業家。逆に、老年実業家、壮年実業家、熟年実業家、などの言葉は存在しない。とりわけ、世間では青年実業家という言葉を最も多く用いていると思う。

 さて、この青年実業家のイメージはどんなもんだろう。茶髪にロン毛、ブランドの服を着て、外車を乗り回している。一見これはホストのイメージとかぶっている。もちろん、このホストのイメージも実際に正しいのかどうか分からない。そして、この青年実業家のイメージも現実のものと違う可能性も高い。確かにイメージ通りの青年実業かもいるだろうが、実際には家業を継いだ二代目とかで、冴えない格好で「お見合いパーティー」とかに参加しているパターンの方が多いのではないかと私は思っている。どこまでが青年で、どこからが実業家か怪しいわけで、その両方の要素を持つ、青年実業家なる職業がますます怪しく思えるのも当然のことだろう。はたして実態はどうだろうか?。

(秀)