第994話 ■白い奴ら

 このコラムで時事問題というか、三面記事的なものを扱う場合は、独自の視点から主張を展開してみるか、いずれ時間が経って読み返し、「ああ、あの頃はこんな事件があったんだなあ~」と思い出すときに、その記憶をより確実にするために書き記しておくことを目的にしている。今回は明らかに後者だ。独自の主張なんてありっこない。あの白い奴らは明らかに異様で変だ。文字通りの「電波系」。

 「パルウェーブ研究所」なる異様な白装束の団体が岐阜県の林道を占拠しているとマスコミが報道している。「スカラー波」という電磁波から身を守るために白い装束に身を包み、車には目の検査のときの測定模様の「C」という文字を幾重にも交互に重ねたようなデザインのマークがボディはもちろん、フロントガラスにまで貼り巡らされている。ボディカラーはもちろん白だ。

 当初、取材拒否の立場を取っていた理由を「共産ゲリラが電磁波を利用した兵器で狙っているから」とようやくマスコミに対して語り始めた。我々の想像を絶するような高度な技術で電磁波を使用して攻撃してくるらしい。それほど高度な技術を持っているのなら、林道に隠れていようとも楽々と見つけてしまうだろう。あんな白い装束の目立つ格好で、しかも団体で動いていたら。

 高度な技術に対抗するにはあまりにもお粗末な限りだ。あの白い布には電磁波防御には何の効果もないらしい。そもそも彼らが唱える「スカラー波」自体、静電気のことだというではないか。そこまで電磁波を憂えるのなら山になんかこもっていないで、街に出てマナーの悪い携帯電話を怪しい雰囲気で取り締まってもらいたいものだ。電車に白装束で反射板を持った奴らだ団体で乗り込んで来たら、人々のメールを打つ手もきっと止まってしまうことだろう。

(秀)