第1782話 ■ガラパゴス

 iPadの日本上陸の前後だったと思うが、シャープとソニーが年内に国内での電子書籍端末を発売する旨発表していて、そのシャープの端末の概要が先日公開された。既に試作機も出来てのお披露目であった。見るからにiPadそっくりのタブレット型の端末である。それはある種、予想どおりのことであったが、それは改めてiPadの優位性を感じされるものでもあった。

 端末は2種類あって、一方はiPadよりもやや画面が大きく、もう一方は新書の本の大きさくらいではないかと、写真では読み取れる。その端末の名は「ガラパゴス(GALAPAGOS)」。世界標準に対して、孤立の代名詞として使用されるガラパゴスである。何とも自虐的で縁起の悪いネーミングに思える。戦う前から、負けた時の言い訳というか、笑いぐさになることを予期しているかのようだ。

 日本語の電子書籍の標準フォーマット規格がまだ定まっていないために、これまでシャープが手がけてきた「XMDF」という規格を中心に据えている。これなら日本語の縦書き表示などにも対応している。しかし、普及状況が芳しくない。リーダー(専用端末あるいはパソコン用のリーダーソフト)とコンテンツは、言わば、卵と鶏の関係だが、XMDFが日本語コンテンツの標準フォーマットになることはまずありえない。世界標準と言われる、ePub形式に対して、やはりガラパゴスなのである。

 OSはAndroidで、大きい方の端末の予想販売価格が5万円と発表されている。ほぼiPadと同じ価格である。これが1万円程度の衝撃的な価格ならまだしも、同じ金額ならわざわざガラパゴスを買おうというのは、相当奇特な人だ。そしてこれがコンテンツの拡充にも大きく影響することだろう。端末売れない→コンテンツ揃わない→ますます端末売れない→ますますコンテンツ揃わない、悪循環が続くばかり。

 この勝負、全てはタイミングである。iBooksやアマゾンの電子書籍が日本に本格参入してくる前に、国内での市場を作れるかに掛かっている。けどそれはおそらく無理だろう。ガラパゴスとして、周りからずっと孤立したままで居続けられるのなら良いが、そういうことはあり得ない。

 私はアマゾンの電子書籍コンテンツが日本でも相当のシェアを持つではないかと予想している。アマゾンはコンテンツさえ売れれば、Kindleの専用端末が売れる必要はない。むしろ、端末では利益がなく、コンテンツで儲ける形のビジネスモデルだ。アマゾンはパソコンなどにKindleのリーダーソフトを用意していれば良い。そしてAndroid用のソフトは既にある。結局、ガラパゴスはパソコンとして孤立から脱してようやく普通の電子書籍端末となる、皮肉を背負っている気がする。

(秀)