第2029話 ■シン・資本論

 カール・マルクスはその主著作「資本論」を「商品」の分析から始めている。その理由を、資本主義において資本(富)の多くが「商品」の形で存在しているから、と説明していた。約150年ほど前に書かれた本であるが、今となっては彼の時代とは冒頭の前提が大きく違ってしまっている。もはや資本の多くが「商品」の形態では存在していない。主たる資本は「金融資産」として存在している。もちろん流動性は高いが、投下労働量に見合った価値が存在するものではない。

 もう5年ほど前になるが、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本(原題:Capital in the Twenty-First Century)」という経済本がちょっとした話題になった。私も本は入手したが、ボリュームが多いのと、数字やグラフにクラクラしてしまい、読破には至らなかった。エッセンスとしては、税制のために富める者はよりいっそう富み、貧しき者は貧しいまま。このことを過去約300年の歴史と数字の裏付けで検証し、富の再分配の必要性を主張するものだった(はず)。

 本は読破できなかったが勉強会に出席したときのメモを見返すと「現在、国家はGDPの約6年分の富を持っている」と書き留めていた。日本の場合、ざっと三千兆円になる。受け売りのままではしょうがないので、これがどこにどのような形であるのかを精査する必要があろう。ただ、あいにく私はその道のプロではない。

 「21世紀の資本」が映画になった。彼の主張の中に、アフターコロナにおける復活のヒントがありそうな気がする。ただ、本作公開予定のいずれの映画館も休館や延期となっている皮肉。

(秀)