第1159話 ■ジェンキンス氏への対応について

 正しいことは言わねばならず、間違っていることは指摘しなくてはならない。これが秀コラムのポリシーだ。だから言おう。ジェンキンス氏に対する日本政府やマスコミの対応は間違っている。曽我さんが拉致されていたからと言って、夫のジェンキンス氏の脱走の罪が許されるはずはない。

 脱走兵と言えばその国においては犯罪者である。米国にとっては脱走によって自国軍の機密を漏らされた可能性がある。ジェンキンス氏が日本国籍を取得すれば、政府として自国民保護の立場から米国の訴追に対して交渉をする理由付けが成り立つが、普通に考えた場合、日本人との婚姻で他国籍を持つ者に対して日本国籍を与えるとしたとき、その当事者が旧祖国での犯罪者であれば、おいそれと日本国籍を与え、元の国の訴追から守ってあげようという話にはならないはず。そもそも現時点でジェンキンス氏は日本人ではない。

 他国での犯罪だから感覚が麻痺してしまっているのか?。皆兵制による軍隊を持っていないから、脱走兵に対する正しい判断ができないのか?。それとも相手が病人だから許しているのか?。それとも拉致被害者の家族だから特別なのか?。料金がたとえ1円だろうとチャーター機を仕立ててまで、迎えに行く神経。飛行機が到着後、首都高を走るバスの映像を延々と流しているマスコミ。いずれも変だ。

 曽我さんとジェンキンス氏を第三国で会せようと政府がお膳立てをするところまでは、私も異論はない。しかし、そこで術後の傷の状態が良くないから日本へ連れて来ようとか、その間、米国の訴追をかわそうとか、このあたりが変である。繰り返して言おう。曽我さんの拉致問題とジェンキンス氏の脱走問題は全く別問題。配偶者が拉致被害者であるとか病気だからと言って脱走の罪は消えるものでも、大目に見られるものでもない。拉致問題と切り離して考えれば今回のジェンキンス氏に対する政府の対応がいかに奇妙なものかよく分かる。「曽我さん、おめでとう」などという現状の雰囲気の中で冷静に異を唱えるマスコミはないものか。

(秀)