第1402話 ■「芝浜」を探して

 例によって、日曜日の朝。上野鈴本演芸場の前で早朝寄席の開場を待っていた。ちょうどこの時期、年末となると「芝浜」の季節となる。落語界の第九みたいなもんだ。定席の寄席の方でも夜席で、日替わりでトリが芝浜をやるということで看板が出ていた。一緒に並んでいた会社の先輩が「芝浜ってどんな話?」と聞くので、「財布を拾うんですよ」とかいつまんであらすじを披露した。

 ざっとこんな話である。
 腕は良いが、酒におぼれてしまって仕事をしない行商の魚屋がいた。そんなある日、女房が魚屋を起こして久しぶりに魚河岸へと追い立てる。しかし時が早く、魚河岸はまだやっていない。仕方がないので魚屋は芝の浜で時間をつぶし、そこで浜に流れ着いた皮の財布を拾う。これで当分働かなくても良いと、友人を呼んで大酒を飲むが、翌日に起こされると、財布を拾ったのは夢だったと女房に言われる。ここで改心して酒を断ち、魚屋は一生懸命働き、三年経った頃には、ちょっとした店を構えるまでになった。そして、ちょうど大晦日の日に女房が財布を拾ったことが夢でなかったことを告白する。主人公の名前や拾った財布に入っていた金額は噺家によってまちまちだが、金額の方は大体50両あたりとなっている。

 この日、二ツ目の早朝寄席で「芝浜」を聞くことができた。この噺は知っていたが、落語で聞いたのは初めてだった。何でこの噺を知っていたかと言うと、本で読んだことあったし、数年前に「タイガー&ドラゴン」の話にも出てきた。そして何より、幼い頃に「天才バカボン」のアニメでこの話を原作にしたものがあったのだ。

 天才バカボンはこれまでに何度もアニメ化されているが、一番最初のシリーズである。植木屋であるパパがある日手入れをしていた木の上で、お札でできた鳥の巣を見つけ持ち帰ってくる。「これでしばらく仕事をしなくて良いのだ」と思っていたが、ママがそれを隠して「夢だった」と信じ込ませる。まさに「芝浜」なのだ。

 早速、レンタルビデオ屋に行って、このDVDを探したのだが、以前その店にあったのは確認していたが、需要がないらしく、既に店からは引き上げられていた。しょうがないので、「タイガー&ドラゴン」で芝浜が出てくる回(第1話)のDVDを借りて帰って見た。

 今で言えば、宝くじが当たって、「もう働かなくて良い!」っていうやつか?。けど、そんな夢ならしょっちゅう見ているよ。酒は飲んでないけど。

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(秀)