第1558話 ■銀天夜市とアーケード

 故郷の地元の新聞のサイトをインターネットで見ていたら、市の中心部にある商店街のアーケードを撤去するとの報道を目にした。詳しく読むと、撤去されるのは全部ではなく、ある名店街組合の部分ということだった。それでも約半分はなくなることになる。この名店街組合が自己破産をし、代わって管理すべき市が撤去する方針とのことだ。私が生まれる前に架けられたアーケードで老朽化がひどいものの、補修費用もないという状態だったようだ。

 このアーケードがなくなることで「銀天夜市はどうなるんだ?」と思った。銀天夜市とは夏の2ヶ月ほど、毎週土曜日の夜に行われていた、商店街のお祭りだ。各店が売り出しを行う一方、夜店が並び、テレビ番組のキャラクターなどのかぶりモノのぬいぐるみが会場を練り歩くものだった。ステージでは、のど自慢やミスコンテストなども行われていた。私はこれに連れて行ってもらうのが楽しみで、毎週仕事から帰ってくる母親を待ったものだ。(父親は人が多いところが嫌で連れて行ってくれなかった)

 雨が降ると、「ぬいぐるみが濡れるから夜市はやってない」と親に言われて信じていたが、やがて、雨が降ろうとアーケードがあるから大丈夫なことを知って、親にだまされていた事に大いにショックを受けた。けどこれからアーケードがなくなると、雨の日の夜市はどうなるのだろうか?。夜市自体がなくなるかもしれない。

 以前に比べると、客足は郊外の複合商業施設の方に移動しており、市の中心部の商店街は寂れてしまっている。アーケードの撤去が商店街の大きな転換点になるのは間違いない。アーケードはなくなっても、私の記憶は朽ちることない。けど、やはりさみしい。

(秀)