第1574話 ■映画館の入場料とDVD化について

 現在、通常の映画館の入場料は大人で千八百円。前売り券を買っていれば千三百円である。この金額を皆さんはどう思うだろうか?。かつて映画が最大のレジャーだった、昭和30年代から40年代あたりの金額を会社員の初任給などを元に現在の貨幣価値に置き換えた場合、あまり変化がないことが確認できた。現在の千八百円という料金は実に16年間据え置かれている。けど、一人分ならまだしも、二人分を負担するとなるとさすがにこたえる金額だ。

 かつて映画産業が華やかだった時代にはテレビもまだあまり普及していなかったし、他にこれと言った娯楽も少なかった。しかし今では娯楽は多様化し、映画館も大手のシネコンは健在だが、かつて街あった小さな映画館はほとんど姿を消している。

 そして最近はDVD化やテレビでの放送の影響も大きかろう。約半年もすれば、ほとんどの作品のDVDがレンタルショップに並ぶ。かつて一人千八百円だったものが、四百円あまりで、複数人見ることもできる。もちろん、大きなスクリーンや立派な音響システムはないだろうけど。我が家人は「どうせすぐDVDが出るから」と言って、映画館に足を運ぶことをやめ、DVDが出ても、「新作はレンタル料が高いから」としばらく待っていたら、今度は「どうせすぐテレビ(WOWOWなど)でやるから」と、レンタルも敬遠する始末。

 公開された映画のほとんどがDVDになるのは非常に良い事だと思う。公開館が少なかったり、近くで見る事ができなかった作品を後からでも見る事ができるのは喜ばしい。一方、制作サイドものDVD化やテレビ放送の権利金を当初から当て込んで作品を作っている。逆にこれがないと、制作が厳しい現実がある。費用を短期間で回収したいがためにDVDのリリースも早くなっているのだろう。かつて、映画を自宅で見るとなると一般のテレビ放送でしかなくて、これだと公開から少なくとも2年は待たされていた。しかもヒットした作品しかテレビには掛からない。

 今となっては映画館の入場料とDVDのレンタル代、そしてDVDのリリース時期のバランスが良くないと思う。もっとレンタル代は高くても良いし、あるいはリリース時期をもっと遅らせても良いのではないかと思う。あまり大衆に迎合してしまうと、本来の映画館に足を運んでくれる人の数が徐々に減っていくことにも成りかねない。そのうち、映画館には人は入らないが、DVDのレンタルは好調といった、制作費が高価なVシネマを作ってしまうことになるかもしれないことを私は危惧している。

(秀)